10.「大きな国アメリカ、北海道に似た国アメリカ」

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アメリカ合衆国。今から二百数十年前、イギリスで迫害を受けた人々が移り住んで来て始まった国、と学校では習います。「合衆国」とは意訳も極まれり、とはいえ名訳だと思います。United Statesの字面には、何処にも「衆」の文字や意味はありません。我が国の誰の仕業(翻訳)でしょうか。

 それはさておき、アメリカ合衆国(以下アメリカ)を訪れるのは今回が8度目。しかも他の色々なところへは立ち寄るものの、必ずカリフォルニア州ナパに滞在。最初に訪れたのはこの国の独立200年祭の頃ですから、例えれば現在の北海道のような時期となりましょうか。北海道は本格的に開拓されて150年経ちますが、加速される歴史のスピードを考えると、同等と考えることも出来ます。

 とにかく、アメリカは国の成り立ち、地域内の人々の結び着き、そして人と人の対話の仕方がとても面白い。もっと正確に表現すると、一般の日本人にとっては普通じゃない。日本人でも少数派の、思っていることをその都度ハッキリ述べる、私のような人間にとっては、同類的で心地良い。どうしてこうなるのでしょう。

 「衆」を民族と考える人もいます。私は、しかし「衆」を一人一人の異なった個性と考えることにしています。そのことが前提にあって、この国は成り立っているのだと。何党だ、何々主義だとかのイデオロギーではなく、まず自分自身が目の前にあることにどう対処するのか、はっきり表明して議論し始める。どうも我が国の「衆議院」とは違った手法のように思われます。

 今から40年前の1975年、間違ってそんな国のナパという寒村に入って行き、知己を得て長逗留し、結局何度も訪れて人生最大の影響を受けました。最初彼らの夢を聞いた時、当時ドイツで勉強している最中だった私は、アメリカ的なファンタジーと感じました。見果てぬ夢と。この町を世界一のワインの町にするのだ。合衆国が真のワイン生産国になるのだ、と当時ナパの人々は言っていたのですから。

 しかし、その後気になって何度も訪ねるうちに、自分の間違いに気付きました。彼らは実によく技術や科学の進歩を計算に入れ、社会学的に人々の心理の変化を読んでいるのです。人々が何を欲しがるのか。そして自分は何がしたいのか。

 結果はどうでしょう。今や全米50州に16千軒のまともなワイナリーが出来ました。40年前は全米で僅か200軒程しかなかったのに。余市・仁木は現在建設中も入れて6軒。ナパ・ソノマ・メンドチーノ3ヶ町村と余市・仁木等6ヶ町村はほぼ同等の地域力と考えて、現代のスピードを加味しますと、彼らが40年で作り上げた1000軒は無理でも、200軒を15年でというのは、十分に可能です。進めましょう。