119.温暖化のスピード

2017/09/21

  完全に自暴自棄の国と化した北朝鮮の動きに心を騒がせ、その反面隣接国の事なのに不思議と冷静な韓国の対応に、何やら例え難い不信感を募らせている日本の私です。しかし冷静に地球規模で観察しますと、当のアメリカ合衆国やら、遠い彼方のヨーロッパ諸国の人々にとっては、残念ながら我が日本のことは割合どうでよいことのようです。それはあたかも2年程前ギリシャ問題を抱えていたEUに対して我が国がとった態度の裏返しのようでもあります。自分の国にとっては火急の事ではない、と。
  この図式を下敷きに考えると、EUと我が国の温暖化に対する危機感のレベルの違いが丸切り異なることに気付かされます。つい先日EUの中でも最後発の感じで、英国とフランスが2040年以後のガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する法律を成立させました。先立ってドイツは2035年とのことです。すべてそれ以降はEV車(電気自動車)系に置き換るというのです。(因みに近くて遠い国の中国では2019年よりEV車促進法が施行されます。)
  要は、目に見える温暖化現象、そしてその現象がそこに住む人々に与えるインパクトが完全に次元の違うものなのです。思うにかつて3年前ロシアのソチ・オリンピックの時に、欧州大陸でスイスアルプス等万年雪地帯以外が無雪に近い状態になったのを見て人々は怪しみ始めました。そして、その後冬の終り頃とでもいうべき3月にドイツでも平気で日中20℃以上を記録する年が続き、歴史始まって以来の気象異変となりました。  
  この春アメリカの非常にアホな大統領がパリ条約離脱を表明した時、日本の人々はいざ知らず、欧州諸国の人々はアメリカに愛想を尽かしたと思います。私自身は他の諸々の理由からアメリカを大きく評価はしていますものの、歴史的に見てこの国は何十年に一遍の割合で、他の人類が信じられないことを平気でやって世界を唖然とさせます。人気投票的な大統領制、そしてその唯一の人物が大きな権力を有するところに問題の起点があるのはよく知られているところです。
  僅か20年前まで欧州のワインぶどう栽培の北限がフランスのベルギー国境近くにあるシャンパーニュだったのが、現在では中部イングランドやスウェーデン南部にまで北上したのは知る人ぞ知る大きなニュースです。
  日本のワインの法律が大きく様変わりして、今迄通りアルゼンチン等のワイン最安値国からこっそり輸入しての「国内ビン詰め替え」の如き手品が使えなくなった時、じゃあ仕方なく原点に却ってワインぶどう畑を作ろうということになりました。その時、単に広いひとかたまりの土地が手に入るからと、北海道中西部が人気を博した訳では決してなく、この20年我が国でも静かに進行していた温暖化を考えた上での北海道選択だったことは、不肖私の新潟から余市への転戦でも、現在証明されようとしています。
  我が余市のOcciGabi Wineryでは、醸造所の周りをきれいな大きな庭園で囲み、その外側60,000㎡の畑をすべてフランス系ワインぶどうにしました。もうこの40年間のように早熟・早や飲みのドイツ系ぶどう一辺倒の時代は終わったとばかりにです。植え付けから3~4年経って、そのぶどうがたわわに実っています。どの様な縁でか、この7月30日以来我が家の一員となった老甲斐犬「カイ」と共に、この12品種のぶどう畑を散歩しながら、もう8割方成熟したぶどうの粒を味見して歩く時の気持ちの高まりは、私のワイン作り
45年の中でも最高のものです。
  真のワイン作りというものが、そして我が国で最高のワイン作りがこの地北海道から発せられる、今年はその始まりなのだという想いしきりです。