130.「新ワイン法」考察Ⅳ

2018/02/23

  酒屋さんの店先に旧法律下の「国産ワイン」がまだ並んでいて、この10月末日以降買い物に来たワケを知る消費者が発見したとしましょう。暴動は大袈裟でしょうが、ちょとしたパニックにはなることでしょう。しかし、店先のウソ国産ワインがその日までに上手に完全に撤収されていて、「未知との遭遇」ならざる「国産ワイン・旧知との邂逅」とでもいうべき消費者とウソ国産ワインのバッティングが何とか避けられたとしても、人々の記憶がそれ程早く薄れるものでしょうか。特にワインファンの人々の。
  悲しい予想ながら、ワインファンの人々の多くは新しい「日本ワイン」にも懐疑的になると思います。不買運動とまでは行かずとも確実に「日本ワイン」の声望は地に墜ちます。今まで国が何も決めずとも、「大昔(といっても40年前)から本当の国産ワイン(というより世界基準のワイン)だけを作っていた貴方のワインはブレイクするかもね」と妻のGabiは言います。さあ、どうでしょうか。レジェンド・ワインを気取った新手の連載マンガ的フェイク・ワインが現れないという保証は何処にもありません。確かに嘘つきが活躍しやすい環境がワイン作りの世界にはあるのです。さればこそ本場のワイン国では法律がとても厳しいのです。
  近未来予想学者でも何でもない私ですが、ワイン製造業界には非常に詳しい人間ゆえに、今後起こりうべき事柄をあれこれと考えます。今回の法律はワイン製造業者(ワイナリー)だけに適用される法律です。ワイン製造業者は国の免許事業ですから、もし法律を破ったら1,2回は警告、それ以上は免許取り消しの強い処置に出ると明言しています。柔道の試合みたいですね。私がかつて学んだドイツではInspektor(インスペクトア:検査官)というそれは恐ろしいお役人が居て、抜き打ちで検査して歩きます。違反は個人の懲役刑にまで発展することもあるというのです。罰の軽重を言っているのではありません。ワインの本場でも残念ながら命を賭けてでもインチキをする人間が居るということを言いたいのです。
  日本の場合、現況が信じられない程デタラメで、それを完成度の高い欧州式の新法で縛ろうとするのですから、インスペクション(検査・検閲)は最も重要です。さもなくば、抜け駆け、胡麻化し、知らん振りのオンパレードとなりかねません。
  現在のところ、国はこの検査官の養成を行ってはいないようです。性善説に立って、日本人は悪いことをしないということなのでしょうか。しかし、余りにも多くの適用除外例(違反)が発生しそうな今回の場合、用心したほうが良いと強く思います。「日本ワイン」と「非日本ワイン」の双方を製造する両刀遣いを廃止(禁止)して「日本ワイン」ラベルの使用権を会社単位にすることで(要するに「日本ワイン」を1本でも作りたい会社は「非日本ワイン」を全く作ってはいけないというall or nothingの原則を導入することによって)国の検査の仕事は大幅に軽減出来ますし、国民(消費者)の信頼も層倍に厚くなります。そうすべきです。