155.食用ぶどうでのワイン作りⅡ

2019/02/24

さて、EPA・TPP対応の「新ワイン法」施行(2018年10月3日)以前に「甲州」「マスカットべりーA 」がちょっと流行しました。あれはチリ・アルゼンチンから輸入の「シャルドネ」や「カベルネ・ソーヴィニョン」に甲州やマスカット・べりーA をほんの数滴アリバイ程度に混入したワインが多かったのでしょう。どちらにしてもこれらも今回の「新ワイン法」では「非日本ワイン」と分類されますので、一応法律を守って食用ぶどう100%で作っているのでしょうが、貴兄のおっしゃるとても飲めたものじゃないワインは、そんなワインのことだろうと思われます。蛇足ながら、何故「甲州」や「マスカット・べりーA」に大量の輸入原料を入れたのか。答えは簡単、製造コストです。とにかく地球の裏側からやって来る輸入原料は日本の「円」との関係上(要するに為替事情ゆえ)信じられない程安価なのですから。1本分数円だそうです。更に言及しますと、日本中でかつて「輸入原料使用でありながら国産と表示したワイン」が横行した真の理由は、この低コスト性や何も栽培が難しいヴィニフェラ種を本当に作らなくてよいことに加え、外国産ワイン・ジュース輸入業者に電話さえすれば、瞬間的に大増産が出来ることにあったのです。畑も設備も要らないワイン作り、何やら地球上の話ではなくて火星での話みたいですね。
  結論としては、本当にワインを作りたいのならば、先ずはヴィニフェラ一族(欧州系ワイン専用)のぶどうを大面積植えるところから始めなければなりません。ひとつの品種を最低でも1000~2000坪(30~60アール)植えなければ1000ℓ~3000ℓの発酵タンクを満たすことは出来ません。10種類程度の異なるワインを作りたいのならば、ですから何万坪の畑が必要となるのです。残念ながらそんな人は日本中に10人も居ないことでしょう。ワインを作りたい人は何百人も居ましょうが、その原料たるヴィニフェラ種ぶどうを5~10ha作っている人は殆んど居ないのが実情だからです。
  そして本当にワインを作りたいのならば、決して輸入原料には近づかないこと。今後偽装ワインには免許取り消しの罰が待っています。
  更に断言しますが、真の飲み手は貴兄がおっしゃるラブルスカ(食用)ぶどうのワインにも近寄らないこと。ワインのことが嫌いになりますから。
  インチキワインを飲むべきか、食用ぶどうのワインを飲むべきか。現代のハムレットはもう迷う必要などありません。そんなもの、どちらも切り捨てるのです。他に飲むべき真面目なワインはこの世に星の数程あるのですから。(残念ながら、純国産の「日本ワイン」には余りお奨めのワインはありませんが、、、。)