164.恥の上塗り

2019/06/25

  新しい、というよりは本物の法律が施行されて、ワイン作りの業界は大混乱中とはいえ、確実に正しい方向へと梶を切りつつあります。そんな最中、矢張りというべきか新たなる怪し気な活動が次々と世に出て来ました。
  ワインぶどう栽培協会なる組織を立ち上げる御人が現れました。私は今までぶどう栽培には関わったことがございません、と公言していた人物が今更そのような動きをする真の意図は一体何でしょうか。つい最近まで自然派を自称するあまた存在した「自分好き勝手ボロボロワイナリー」群のリーダーを主張して来たものの、その運動はそもそもインチキ輸入原料使用ワイナリーに対するアンチテーゼ(見せかけ対立軸)であったため、今回の法改正で存在理由が希薄化したゆえでしょうか。それとも日本にはまだそんな組織が無いから、早目に作っておこうということでしょうか。実践・研究・理論は後付けで良い、と。
  もうひとつ似たようなのが。日本の気候条件はヨーロッパ原産のワイン専用品種の栽培にはそもそも不適なのだから、在来のアメリカ系生食用ぶどうでワインを作れば良い。デラウェアだって、甲州だって、ナイアガラだって何処何処の何のワインは結構いけるよ、とバカをやっている。おまけに立派な本まで出して、後から逃げられない証拠物件まで添えているのですから、全く言い訳が効かなくなりそうです。本当にこの人まともな舌を持っているのかしらと思わせる文章がずらりですから、単に「隠れ本屋大賞」を狙った運動かも知れません。
  更に極め付きというべきことが起りました。北海道の半おおやけの機関が「ワイン新酵母を発見!」とやったのです。この人達は現在のワイン作りの現場を知っていてこんなことをしているのでしょうか。「純粋培養酵母」と総称される現在世界中に数百種類流通している非常に高価な酵母は、そもそもその菌種(きんたね)を南アフリカやオーストラリア等、特殊な地域に依存しています。ぶどうが生育する地元の菌種がベストとなり得ないことは、歴史的にも経営・経済的にも実証されています。何を今更、貧弱な公共予算で幼稚園児が泥こね細工をするようなことをしているのでしょう。功名心でしょうか。もしそうなら、先ず高価な美味しいワインをいっぱい飲むところから始めてはいかがでしょうか。安ワインしか飲んだことのない人が高級ワイン作りの酵母開発をする。その論理的誤謬に気付くべきです。現在、世界をリードする酵母メーカー群の資本規模をネットで調べてみて下さい。きっと納得するハズです。
  カネ、カネ、カネという気は毛頭ありませんが、現代の研究開発には莫大な資金が必要なのは確かです。我がトヨタが年商30兆円、ホンダが15兆円と空前の決算を発表しましたが、それがレクサスでもフィットでも快適に安心して運転出来るということの原点にあるのです。トヨタは利益の大半を或る開発に使うとまで豪語しています。
  要するにみすぼらしい理論武装で世に旗を立てようとしないことです。ワイン作りは人類最古の営みのひとつなのですから。
  新しいワイン法を作って従来のインチキワイン作りの畑をきれいに耕したと思ったら、いの一番に雑草の芽が沢山出て来た。これは致し方のないことでしょう。せっせと草取りに励むことです。何と言っても天然の雑草はいざ知らず、世の似非(えせ)理論には殆ど根が無いのですから抜くのは簡単です。(でしょうか?)