166.ヴァカンス制の導入

2019/07/10

  ヨーロッパの先進国やオーストラリア、ニュージーランドでは勤労者の休み方が我が国とは大きく異なります。年休制、いわゆるヴァカンス制で、週休や祝日に加え一年間に4~6週間それぞれの職場で交替交替に休みを取ることが出来ます。
  ドイツでは週休3日の職場も多くなり、加えて年に5週間休める(というより休まなければならない)となると、その取り方にも工夫が必要です。一度に5週間丸々休むと、矢張り何となく職場での存在感(居てくれないと困る感)が薄れるので、3つに分けて2週間・2週間・1週間と年休(ヴァカンス)を取る人が多いようです。
  「君は昨年夏の盛りにたっぷり休んだのだから、今年は他の人にその時季は譲って下さいね。」そうです、会社全体の休みのシフトを組むのは日本で言う総務課長の大切な仕事。会社だって雇用を1~2割拡げなければ、この制度は維持できません。確実に雇用拡大に継ながるのです。
  休暇を取る時季が一年きれいに分散すると、良いことが幾つもあります。帰省ラッシュの如き道路渋滞は姿を消すでしょう。ワイナリーを営みながらレストランを開いている私共のような接客業では、来客が年中平均化するため、施設の利用効率も上がり雇用も通年安定します。休みを取った人々も、訪れる先々で毎度芋を洗うような困雑の中、徒労感ゆえにグッタリすることもなくなるでしょう。迎える側もゆったりとホスピタリティ溢れる対応が可能となり、接客の質も向上することでしょう。旅行代理店だってきっと喜ぶに違いありません
 古代ローマ帝政時代に言われた「市民にはパン(食料)とサーカス(娯楽)を与えれば良い」式のポピュリズム(市民迎合の御都合人気取り)の政治はもうそろそろ止めて、真に豊かな余暇の取り方を模索する時に来ています。国民の祝日を連発して10連休・9連休を作る運動は方針を転換するべきです。世の経団連はじめ経済団体の幹部の人々は、所詮雇われの身の悲しさか、雇用側(会社側の)目線でしか考えようとせず、社会成熟や被雇用者側の安寧への関心・配慮は置き去りにされたままです。現代ほどストレス解消がテーマになっている時代はないにもかかわらずです。
 世界の諸国に伝えるべき文化や伝統を多く持つ我が国ですが、それでも他国から学ぶべきことも数あるのは事実なのですから、早急に国民余暇研究審議会を立ち上げるべきです。これは欧米インバウンド(来訪)観光客誘致と表裏を成すことなのです。