74.品種交配について①

2016/05/15

 ヨーロッパの人々にとって、ワインは手近な飲み物であり、しかも目の前のぶどうから作られる以上、もっとこんな味のぶどうにとか、あのぶどうとこのぶどうの味を併せ持ったものをといった具合に、個人の品種交配の動きは古くからあったものと思われます。
 しかし、近世になってこの運動は国家の管理下に置かれるようになりました。理由は明白で、個人個人が勝手に新しい品種を作り出すのはよいが、訳の分からない品種が次々と作り出され、しかも中途でその新品種に欠陥があった時、回収出来なくなる恐れがあるからです。良きワイン地帯の良き評判のワイン群を作り出すには、公けのコントロールが必要だと考えたのです。
 目的はより良いワインを作り出すことにあるのならば、当然のことながら、単に新しい品種の栽培適性を試験することも重要ですが、それ以上に、その新しいぶどうからどのようなワインが作り出されるかの試験はもっと重要です。
 現代の我が国では、ですから、国の管理下にないところで、個人や一私企業が、新品種を作ったりして、結果、取るに足らない出来のワインがあちらでもこちらでも出来ています。しかも味直しと称して、そのようなワインに大量の輸入ワインを混ぜて「国産」を名乗っていたのです。この動きが新法では出来なくなります。
 非常に分かり易く言うと、おいしいまともなワインが作りたければ、先ず本場の純正品種を栽培し、それからワインを作るという原点回帰が必要です。そこから始めましょう。