75.Cavée Cabernet(キュベ・カベルネ)について

2016/05/17

 世界史の年表を見ても分かる通り、ヨーロッパ大陸は2千年以上いつもどこかで戦争をしていました。それ故、今から70年前の第二次大戦後直後から、全欧州を一つにという運動がなされて来ました。しかし、そうなったらドイツの赤ワインは生き残れるだろうか、と考えた人々がドイツにいました。ピノ・ノワールそのものはシュぺート・ブルグンダーという名で栽培されている。しかし、赤ワインのもう一方の旗頭であるカベルネ・ソーヴィニョン、これはドイツの気候では無理です。そこで、国を挙げての研究が始まりました。「ドイツの気候でも育つカベルネ・ソーヴィニョン」がモットーです。
 30年余の新品種交配研究の成果が、1999年発表の一群のいわゆるジャーマン・カベルネ・シリーズです。Dr.シュライプが種子を播き、Dr.ヒルが育て上げた品種とも言え、全部で6品種あります。列記しますと、カベルネ・クービン、カベルネ・ドルサ、カベルネ・ミトス、カベルネ・ドーリオ、アコロン、そしてパラスです。6品種とも本家カベルネ・ソーヴィニョンよりは早熟で、しかも例の独自の渋みを有したぶどうです。ワインを作る時も本家ボルドーに慣らって、少なくとも3品種以上を混合(キュベ)して、新樽熟成させた後ビン詰めします。
 ドイツが国費をかけて作り上げた品種ながら、この余市の気候にもピッタリ適います。先発ウィーン由来のツヴァイゲルトレーベとは全く違った赤ワインの世界がここにあります。開発元のドイツでも最近栽培が拡大しておりますが、きっと我が国でも有力な赤ワイン品種群となることでしょう。面白いのは、その出自ゆえ北海道が栽培中心地となるべく運命付けられている点です。本州での栽培はきっと暑すぎて無理でしょう。