174.国内ワイン市場現況

2019/12/16

  昨年末の12月30日がTPP(環太平洋貿易協定)、そして今年2月1日が日欧EPA(経済協定)の発効日でした。国内ワインの製造現場では、この両協定が丸でボクシングのボディーブローの如くジワァーと効いてきた観があります。
  先ずは輸入ワインそのものか輸入濃縮果汁を使用した場合、表と裏ラベルに「輸入ワイン使用」又は「輸入原料使用」の表示が義務付けられ、今迄のように「国内でビン詰めしたのだから国産」と声高かに宣言出来なくなりました。お役所がそれでも大手ワインメーカーに忖度(そんたく)して、その激変(崩壊)を緩和すべく、輸入濃縮果汁を日本国内で水で割り戻して発酵させたタイプのワインは、「国内製造ワイン」と表記しても良いとギリギリで出した通達も、その実行例が無いところを見ると、きっと貿易相手国(要するにまともなワイン国達)から強く拒絶されたのでしょう。
  結果、誰もが想像した以上にワインの新しい法律は厳格に施行(実行)されています。新ワイン法の主要第二条に「ワインに地名を付する時は、原料ぶどうがその地のものでなければいけない」とありますが、他の地域からぶどうを搬入して来て「○○(工場のある地名)醸造」と変テコリンな逃げ道を模索している会社も数社あります。勿論これは違法。諸外国の抗議どころか、新法に苦しむ同業他社から抜け駆けだと攻撃されて滅びる運命の手法です。
  スーパーマーケットのワイン売場をよく観察すると、国内大手のワイン会社は通常ビン(720mlのガラスビン)でのワイン群を殆んど諦めて、プラスチックペコペコビンや紙製カスク(四角い紙製容器)に詰めて、「輸入原料使用ワイン」を売るつもりのようです。価格もプラスチックビン1本3~400円、1800ml(つまり1升)の紙製カスクで700円と超安値です。勿論、堂々中身は全部輸入ですと明記して。大手は今迄の販売量を「国内の生まのぶどうから作ったワイン」(いわゆる「日本ワイン」)で満たすことは到底無理だからです。単純に計算しても十分の一の量の製造も不可能です。
  今回の法改正は、それが2つの自由貿易協定(TPP&EPA)に依拠している以上、影響はワイン業界だけでは済まされません。例えばウィスキー、ハチミツ、ジャム、ジュース、海塩etcと連鎖して行きます。海塩の例を挙げますと、「伯方の塩」「赤穂の塩」の説明がとても面白い表現に変わりました。オーストラリアから輸入の海塩が100%と表示した後に、日本国内で独特のニガリ添加を行いましたと。へぇーこの間までは全くその地の海水から作っていると言っていたくせに。誠とに往生際の悪い話で、これで消費者が納得するとでも思ってるのでしょうか。