178.凍害の心配
2020/2/17
大寒、立春も過ぎ、今後は三寒四温を繰り返しながらも、気候は確実に暖かい方へと向かうハズですが、この時季に天気概況を見ていて一番気になるのが朝方の最低気温のことです。凍害が心配だからです。全体としてはこの3~40年温暖化の傾向とはいえ時折ドキッとするようなー20度、―30度の観測気温が発表され、しかもそれが近年ワイン用ぶどうを植えた地域の時はとても気になります。積雪が充分にあってぶどうの枝やその枝に付いている冬芽がきちんと寒さから保護されている場合は問題ありません。しかし欧州系ワイン用ぶどうの冬芽の耐寒温度は確かー18度前後のハズです。冬芽が空中に露出した状態でー20度を迎えると、その芽は凍死して春に芽を吹かないのです。
ぶどうの樹の基底部ともいうべき、地中の根や地上の主幹は年齢もある程度経っていますから寒さには強いものの、昨年の夏・秋に形成されたばかりの芽(冬芽と呼んだりもします)は寒さに弱いのです。そして困ったことにぶどうという植物は、この昨年作られたばかりの芽がこの春発芽して当年枝(一年枝とも呼びます)となり、そこに実を成らすのです。あたかも人類に於いても一般に若いカップルだけ(?)が子供を作るが如くにです。「限界集落」と呼ばれる高齢者の多い町に夢のある未来はないように、越冬時に冬芽がダメージを受けるような地域ではワイン作りを目指してはいけない、というのが私の持論です。というよりは世界の常識です。一体、だれが釧路・北見地区や旭川以北の地にワイン用ブドウを植えようと扇動したのでしょうか。
純粋欧州系のワイン用ぶどうよりは多少耐寒性に優れた品種として、山ぶどうとの掛け合わせ品種群のことを云々する人もいますが、それはいけません。何故と言って、それら山ぶどう系のぶどう100%でワインを作ったらトンデモない味の物しか出来ないのです。2018年末に完全施行された新ワイン法ゆえ、輸入ワイン又は輸入濃縮果汁を用いての「味直し」も出来なくなった現在、これら山ぶどう系ぶどうには栽培する意味が全く無くなったとも言えます。要するに山ぶどう系の品種は単なるお客に見せるためのアリバイで、中身は殆んど外国もの(時には外国もの100%)だったから、あちこちでほんのちょっぴりずつ栽培されていたのです。
我が国の飲み手(ワイン愛好家)は決してサル酒を飲む蛮族ではありません。かなり洗練されていて、しかも臭覚は鋭いのです。山ぶどう系100%のワインの場合、味はさておき、香りにかなり特徴的な異臭がありますので、上・中級ワインの製造は無理です。私はそう結論付けしています。