140.ワイン新法余話Ⅱ

2018/08/13

  先日お酒作りの監督官庁の高位の人が我がワイナリーを訪ねて来ました。その時の話。「オチさんは特区免許で少量のワイン作りをしているそこいらの人々を悪く言いますが、私は色々なタイプのワイナリーがあった方が多様性があって良いと思います。」私が答えて曰く、「多様性を言うのでしたら、先ずは或るレベルより上と規定すべきです。設備投資もまともにしない、ぶどうの育て方も殆ど素人の人達までひっくるめて多様性を云々するのは間違っていると思います。悪貨は良貨を駆逐するの例え通り、それらを放置すると、逆にその地区全体のブランド力が著しく低下することになります。」加えて、「彼らは雇用を殆んどしません。現代経済では雇用を喚起しないものは産業とは言えません。テレビでよくやっている村おこし運動が半歳一年で挫折するのはそのためです。」
  更に北海道内最古参のプレミアム・ヴァージョン・ワインを手土産としてお持ちになりました。有名な知る人ぞ知る輸入・偽装ワインなのを私は知っていましたので、「私はこの手のワインは飲まない主義です。」とまで言いました。相手側が「えっ?」という顔をしているのを見て、やっと私も得心しました。ああそうか、監督官庁の人々はその会社が輸入原料を大量に購入していることは知っていても、その輸入原料がその会社のどのワインに入っているのかまでは調べようがないのだ、ということです。きっと彼らは善意に解釈して、安物に輸入ワイン、超高級ワインに山ぶどうと交配したと称する地場産ぶどう由来のワインが入っていると勘違いしているのでしょう。実はまったくその逆なのですが。
  ここが長らく現場で栽培と醸造を行ってきた人間しか仲々理解出来ないことですが、アルゼンチン、ブルガリアの輸入ワインは結構美味なのです。そして何度でも強調しますが、山ぶどうは本来ワイン作りには全く適していません。糖度の圧倒的不足、不快感のある異臭と強すぎる酸味等々が原因です。
  ああ、それにしても今回国が定めた法に従わない際の罰則は製造免許の取り消しです。しかし肝心の国の方のチェック態勢が不充分のままの船出ですから、決してしたくはない想像ですが、輸入品を詰めて「日本ワイン」、同時に国内食用ぶどうから作った分が「輸入ワイン」の二刀流表示が大胆に行われるかもしれません。要するに法を犯しても分からないだろうと思う輩が出そうな感じなのです。要注意です。抜本的な解決方法は何度考えてもひとつしかありません。輸入原料をいじっている会社には「日本ワイン」表記を1本も許さないことです。