20.「ワイナリーの規模についてⅡ」

2015/06/19

 国内に280社程ワイナリーがあるとして、そのうちのきっと8割以上が外国産(主に南米産)の原料(ワインか濃縮果汁)に依存しています。国産の生ぶどうのみでワイン作りをしているのは50社ないでしょう。しかし、その先が問題です。国産のぶどうと言ったところで、生食用のぶどう(いわゆる「食べるぶどう」)から作ったものを果してワインと呼んで良いかどうか。
 私の考えでは、山梨県で散々言っている「甲州」もワイン用ぶどうではありません。北海道の東部で言っている山ぶどうとの交配種も違います。世界の潮流としてヨーロッパ原産のヴィニフェラ種だけでワイン作りをしているから、ということもありますが、理由はもっと違うところにあります。食べるぶどうや甲州ぶどう、そして山ぶどうの交配種のことを言う時、彼らの姿勢の中に輸入ワインや輸入濃縮果汁を大量に使っていることへのアリバイ的弁明がありますし、又食べるぶどう使用に至っては他者依存のぶどう作り(いわゆる契約栽培)やクズぶどうを使っての大量生産が根底にあるからです。前回述べた「土着性」、「個別性」、「希少性」に反するのです。
 欧州原産のワイン用ぶどうを思い切り栽培して、自分のワインを作ってみよう。例えスタートからの数年間は同じ村、町の友人からワイン用ぶどうを分けて貰って、それでワイン作りを始めたとしても、数年後には自社の周囲に植えたワイン用ぶどうを中心にワイン作りをしよう。そんな考えのワイン作り手が次から次とこの里に住み、人を雇い、次に雇われている人達も独立して行きます。明治の開村以来140年が経ち、かつて果物生産で名を成したここ余市・仁木の里は現在危機に瀕していますが、ちょっと目先きを変えて、すべての果物をワイン用ぶどうに変える程の意気込みで新産業たるワイナリー・ゾーン化に取り組めば、素晴らしい近未来が待っている。という私の考えは、地元の人々に理解されたり、されなかったりというのが実情です。
 地域創生という運動があります。これは地域が疲弊し、人口流出・減少が続いて、近い将来消滅してしまうだろうという推論・仮説に基づいています。再生には新規の雇用創出が欠かせないし、そのためにはその地域の産業構造も変えなければならない、と続きます。
 話をワイン作りの方に戻します。国内のワイン作りの現状はワイン作りの法律がないために、来るところまで来ました。早晩、欧州諸国との貿易交渉で取り沙汰され、まともな法律は作られることでしょうが、何よりも消費者(というより真のワインファン)のニーズが高まっています。私の見るところ、現在「土着性」、「個別性」、「希少性」を強調した欧米風のワイン作りの里を現出し得るところの筆頭はここ余市・仁木です。豊富で安価な耕作放棄地と転作可能農地。果樹栽培に向いた気候と積み上げられたワイン用ぶどう栽培の技術。現にこの両町には、もう既に120haのワイン用ぶどう畑が存在し、計1000t程のワイン用ぶどうが毎年収穫されています。それなのに、その1000tのぶどうの内、5%しか地元でワイン化されていないのが実情です。国内で生産される欧州原産のワイン用ぶどうの2割以上がこの里で収穫され、それは日本一の数字なのに、ですよ。何ということでしょう。
 余市・仁木の里も「余市川ワインバレー」でのワイナリー群展開にあたっては、5haの畑、5万本のワイン~15haの畑・15万本のワインの範囲内を標準型とし、平均を10haの畑・10万本のワイン・20名の雇用としましょう。10~15年以内に2000haの畑2000万本のワイン・4000名の雇用はゆうに可能です。何故なら、真のワインの里の出現を日本中のワインファンが待っているからです。
 棚からボタ餅のマッサン・ブームの到来で地元の人の危機感が和らぎ、それが災いしてこの町の創生スタートが遅れることを危惧しています。マッサン放送も終わり、来客数がどうなったか、タクシー会社に問い合わせればすぐに分かることでしょうが。