70.「秋保(あきう)ワイナリー」のこと。

2016/03/28

 2月下旬、山形の苗木屋さん訪問の際に帰路仙台市のお湯どころにあるAKIU WINERYを訪ねてみました。ビル型の温泉ホテルが十数件林立する峡谷の只中に目標のワイナリーはありました。周囲に1.5ha程のぶどう畑を配し、中央のワイナリー棟はコンパクトでモダンな作りのもの。オーナーは一体どんな人物だろうと思う間もなく、相手が私を見知っていたらしく現れ、一時間程歓談しました。ここも新しい表示法を意識してのコンセプトで、無理なく合計4.5ha(3haは跳び地)の良い畑を仕掛けたばかりのようです。40代前半で御当主の毛利親房氏が、初対面ながら非常に好感の持てる人だったのも幸いして、とても実りある話し合いとなりました。年間200万人が訪れる温泉峡谷をより高級化する手立てとして、洋食に適うワインを自前で作ってしまおうというのです。ぶどうの品種選定ひとつをとってみても、かなり訴求力のある高級ワインのラインアップで、これはうまく行くな、と勝手に判断した私です。相手が尋ね、私は答えながらも更に相手に尋ね、と数度のプロセスを繰り返しただけで、相手の正直度、誠実さが伝わってきます。雇用しているスタッフもすべて紹介頂き、この陣容で、この設備規模で、何を作って、いくらで売ってと話し合っていて、私の頭の中を駆け巡る数字と相手の口から出る数字が悉く一致する。こういう話し合いがとても好きです。相手の口から出る数字に誇張があったり、こちらの尋ねることに対する相手の答え方に迷いがあったりすると、北朝鮮との話し合いみたいで空しくなり、会話を打ち切りたくなるのですが、それが一切無く、とても快く一回目の会談を終えました。近い将来、年産4~5万本を目指すとのことですが、高級ワイン指向で仲々のワイナリーになるものとお見受けしました。きっと今後あちらでも私共のワイナリーを余市にお訪ねになるでしょうが、私も彼のワイナリーを何度も訪ねることになりそうです。