86 .「1493」読書経過

2016/08/15

  副題Columbian Exchange、コロンブス交換。1492年のコロンブスによるアメリカ発見から、18世紀後半の近代アメリカ成立(独立)までの歴史的空白を埋めるべく、更には、船による通商を通じて一体化した地球が、環境学的に大きく変革する様を述べた本書を、ゆっくりゆっくり読んでいましたら、又々面白い記述に出くわしました。
  1693年から1700年にかけての「スコットランド小氷期」のことです。主作物の大麦が大凶作で、人々はスコットランド領パナマ(ニュー・エジンバラ)の開設を目論み、国の全資本の1/4から1/2を投じたのだそうです。
  3000人近い移民と大きな資本投入もマラリアゆえに殆ど全滅・消失しましたが、その事態を受け、イングランドが消失資本の埋め合わせを条件にスコットランドをようやく合併したのだそうです。「パナマの熱病に助けられて、グレート・ブリテン王国が誕生した」のは1707年のことです。
  17世紀末から19世紀にかけては、徳川政権下の我が国でも天変地異による大飢饉が頻発しますが、その結果起きた政変の規模が英国と日本ではこうも違うものか、と感慨を新たにしました。国際(というより世界)国家と鎖国々家の違いでしょうか。
上述イングランドの下りを読んで私も連想しました。後世の史家は今日の世界情勢をどう記述するでしょうか。きっと、こうです。欧州統一に辣腕をふるった女帝メルケルに、不快感を抱いたイングランドが(自分の国だって女王様の国なのに)EUを離脱し、その煽りで経済が低迷したイングランドを300年前に併合されたスコットランドが見限ろうとした。救いの奇手として、イングランドは、かつてのサッチャー女史顔負けのとてもきかないメイ女史を首相に選んだ。時同じくして、アメリカ合衆国も初の女性大統領ヒラリー・クリントン氏を選び、何時の間にか、サミットG7は実質たった一人の男性(安倍首相)とヒラリー、メルケル、メイの3女傑の話合いの場となった。(フランスのオランドさん、カナダのトルドーさん、そしてイタリアの首相さんごめんなさい勘定に入れなくて)。
  そうです。主要国指導者の女性化が顕著になった年として、2016年は記憶されそうです。それにしても、我が国にはまだ女性首相は現れそうになくて残念です。