93.Cuvée Cabernet

2016/12/31

カリフォルニア・ナパバレーの西隣りにあるソノマバレー。ナパに較べると面積的にもワイナリーの軒数的にもマイナーながら、地形が私共のOcciGabi Wineryの谷間に似ていて、親近感を覚えます。その丁度中程にあるChâteau St.Jean(シャトー・セント・ジーン)は取り分け好きで毎度立ち寄りますが、お目当ては”cinq cépages”(サンク・セパージュ=5つの品種)というワイン。  
  本場ボルドーで栽培されている5つの黒ぶどう品種。カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、カベルネ・フラン、プチ・ヴェルド―そしてマルベック、これらを総称して、私は勝手に「カベルネ族」と呼んでいます。ボルドーでもカリフォルニアでも、はたまた南米でもオーストラリアでも主軸となるカベルネ・ソーヴィニョンは70%以上としているようですが、他の4品種の混率はまちまちです。そして時に全部で4品種に抑えたり、メルローとだけの2品種のみで作ったりというのまでありますが、どちらにしても70%以上はカベルネ・ソーヴィニョンなのです。
  確か1994年95年頃新潟のCave d’Occiで止むに止まれずカベルネ・ソーヴィニョンだけと言ってもよい程カベルネ・ソーヴィニョン混率の高い(90%以上)ワインを作りました。私の人生で初めて作ったボルドータイプのワインでしたが、これがどうも頂けない。味が乗らない原因は、きっと他にもあったのでしょうが、それに懲りて以後マルベックを除く4品種で作るようになりました。
  アッサンブラージュ(混合)と言ったり、キュベ(ブレンド)と言ったりしながら、ぶどうの段階で混ぜ合わせて皮発酵させたり、別々の品種で作ったワインをビンに詰める前のある段階でブレンドしたりと、複数のぶどう品種を合わせて作るには数多くの方法がありますが、正解は仲々分かりませんし、又実際正解というのは全く無いような気さえします。しかもそのワインをビンに詰めて5年後10年後の味わいを予想するのは、正直言って愚かな行為かも知れません。神のみぞ知るの領域の話なのです。
  さて、ここからが北緯42°の余市で作っている私共OcciGabi WineryのCuvée Cabernetの話です。かつて1977年西ドイツ・オーストリア留学より帰国後、空知郡浦臼町という雪深いところでピノ・シャルドネとカベルネ・ソーヴィニョンの苗木を各々2本ずつ手に入れて植えてみました。結果、その当時の気候ゆえどちらも未熟のまま冬を迎え大失敗しました。それから36年を経た2013年に余市に植えたピノ・シャルドネは、糖度も18°以上となり栽培は成功しましたものの、さすがにカベルネ・ソーヴィニョンはまだまだ早いと考え、ドイツ系の血の入ったカベルネ族(これも私の勝手な命名)を5つ植えました。カベルネ・クービン、カベルネ・ドルサ、カベルネ・ミトス、パラス、アコロン。これらを自分の”cing cépages”とばかりに混ぜ合わせようとしたものの、アコロンだけは単独で作ることにしました。余りにも熟期が早く、しかも味の特徴が丸過ぎるからです。結果上述最初の4品種のキュベ・ワインの誕生となりました。作り手の自分としては大いに気に入っています。
  どちらにしても、現在地球上で一番多く植わっている品種がカベルネ・ソーヴィニョンです。私の推測では、ここ余市周辺に限って言えば、赤ワインの主力はきっとこのカベルネ族が担うことになるでしょう。ついでながら、この広い北海道にあって、自分達の町・村が良いワインを作り得るなら、表示を「北海道」などという広域に拡げる行為は自殺行為となります。「皆で渡れば恐くない、そして皆で渡るのはアホばかり」の例え通りにです。