99.ワインの目利き

2017/02/23

 昨年末に「一流芸能人と〇○○」とかいうTV番組で、今は縁深き人となった山瀬まみさんが赤ワインの目隠しテストを受けていました。1本100万円のシャトー・オ・ブリヨンと1本5,000円のワインを違えず当てる、というもの。彼女が当てたか外したかは、丁度その時、外から長い電話が掛かって来て結果は見逃したものの、その後彼女宛てに「新婚さん、いらっしゃい」の礼状を書いたので、その中に自分の感想を述べました。そんなことは詰まらない、と。
  大体1本5,000円もすれば、それはそれなりに一丁前のワインで、決して並みワインとはあなどれない。その上は例え2万円だろうが30万円だろうが、はたまた100万円だろうが、どれを美味しいと判断するかは、個人の好みの領域の話となりそうです。 
  Rose is a rose is a roseと述べたガートルード・スタインではないけれど、Wine is a wine is a wineというのが私の考え方です。「ワインってどんなものかしら」と尋ねられたら、「貴方の手にしているワイン、それがワインです。ワインというものは、何時もそんなものです。」というのが答、という次第です。簡明だけれど意味深長、そして複雑なようでいて理屈っぽくない、とでも申しましょうか。長くぶどう作り・ワイン作りをしていて、気候に恵まれ良く熟したぶどうからは自然に美味しいワインが出来ますし、不順な気候ゆえ余り良く熟さなかったぶどうからは、どんなに頑張っても上質のワインは作り得ません。世の作り手の最重要な仕事が、そのように恵まれない気候の年のぶどうから、一応ワインとして肯ける味にまで持って行くことなのは、知る人ぞ知ることなのです。
  ところが、ワインぶどうをきちんと栽培して、その実からワインを作るという伝統(というか歴史)が殆ど無かったのが我が日本でしたから、決して大袈裟ではなく、今度の「新ワイン法」が本当の日本ワインの歴史に於けるスタートラインとなるのです。
  「ワイン界のシャーロック・ホームズ」の異名をとる偽造ワイン専門家モーリーン・ダウニーに依れば、昨今高級ヴィンテージ物のワイン・オークションでは信じられない事態が起きているとのこと。ドメーヌ・ド・ラ・ロマネコンティにも上記シャトー・オ・ブリヨンにも偽物が大量に出回っているとか。想像するに、そのような偽造ワインが合成して作られる訳もないことでしょうから、二格、三格下の中・高級ワインの詰め替えということになります。
  どうですか。100万円と5000円が入れ替わっていてもおかしくない世界が現実にありそうですし、その時は、我が田崎日本ソムリエ協会会長だって正確に当てられるでしょうか。どうか教えてください。(ゴメンナサイ。答えは期待していません。)